きっかけは、ちょっとした気づきでした。
40代になって、健康診断で血糖値が気になりはじめたころ。
少しでも糖を抑えようと、「糖質ゼロ」と書かれた飲み物や食品を、せっせと選んでいた時期があったのです。
ゼロなら安心。そう思っていました。
でも、あるとき知ってしまいました。
糖質ゼロをうたうものには、たいてい人工甘味料が使われている。そして、その人工甘味料が、かえって体によくないかもしれない——そんな話を耳にしたのです。
えっ。よかれと思って選んでいたのに。
軽くショックでした。同時に、ふと思ったのです。
わたし、自分が口にしているものの中身を、ぜんぜん知らないままきたな、と。
それまで、原材料表示なんてまともに見たことがありませんでした。パッケージの裏に、何やらカタカナがずらりと並んでいる。それを「まあ、認められているものだろうし」と、すっかり素通りしていたわけです。
血糖値のために選んだものが、実は違った。
この「思い込みのズレ」が、わたしには地味にこたえました。
これはいい機会かもしれない。
そう思って、少しずつ食品添加物のことを調べるようになりました。
今日は、その中でわたしが「これは気になるな」と思った添加物と、それとどう付き合っているかを、正直に書いてみようと思います。
全部避けるなんて、無理だった
調べはじめて、まず痛感したことがあります。
添加物を完全に避けるなんて、現実的には無理だ、ということ。
スーパーに並んでいる食品の、ほとんどに何かしら入っています。完全に排除しようとしたら、買えるものがなくなってしまう。自炊だって、調味料には当たり前のように使われている。
それに、添加物にもちゃんと役割があります。
保存性を高めて食中毒を防いだり、品質を保ったり。おかげで、わたしたちは安く、便利に、いろいろな食べ物を口にできているわけです。
だから、「添加物=悪」と敵視するのは、たぶん違う。
国に認められているものは、基本的に「ふつうに食べるぶんには問題ない」とされる量で使われています。神経質になりすぎて、買い物のたびにぐったりするのも、それはそれで本末転倒な気がするのです。
ただ。
「だから何も気にしなくていい」とも、わたしは思えませんでした。
中には、海外では規制されていたり、研究者のあいだで意見が分かれていたりするものもある。そういうものについては、せめて「知ったうえで選ぶ」ようにしたい。
避けられるものは、無理のない範囲で避ける。避けられないものは、気にしすぎない。
そのくらいの、ゆるい距離感。
それが、わたしなりに落ち着いた「付き合い方」でした。
ここからは、わたしが特に気にしている3つを、具体的に書いていきます。
気づけば、いろんなものに入ってる
まずは、果糖ぶどう糖液糖。
聞き慣れない名前かもしれませんが、原材料表示を見ると、本当にあちこちで見かけます。「異性化液糖」と書かれていることもあります。
これは、とうもろこしなどのデンプンから作られる、液体の甘味料です。
冷たい状態だと甘みを強く感じるので、清涼飲料水によく使われています。安く作れて、甘みも強い。メーカーにとっては、とても便利な存在なのでしょう。
では、何が気になるのか。
血糖値を気にしていたわたしには、ちょっと聞き捨てならない話でした。
果糖ぶどう糖液糖は、その名のとおり「果糖」と「ぶどう糖」が混ざったもの。このうちぶどう糖は、しっかり血糖値を上げます。
しかも、清涼飲料水のように液体でとると、一気に体に入る。だから血糖値が急上昇しやすいのです。
じゃあ果糖のほうは安心かというと、そうとも言えません。
果糖は血糖値こそ大きく上げないものの、主に肝臓で代謝されるため、摂りすぎると肝臓に負担がかかり、中性脂肪に変わりやすい。脂肪肝につながる心配もあると言われています。
おまけに、果糖は血糖値を上げにくいぶん、満腹感を感じにくい。
だから、つい飲みすぎ・摂りすぎてしまう。
血糖値を急に上げる側面と、上げないかわりに別の負担をかける側面。両方をあわせ持っているわけです。
血糖値のために糖質ゼロを選んでいたのに、こっちはこっちで血糖値に関わってくる。なんだか甘いものって、どこを向いても落とし穴があるなあ、と思わず苦笑いでした。
もちろん、これも「絶対だめ」という話ではありません。たまにジュースを飲むくらいで、目くじらを立てる必要はないと思っています。
ただ、わたしの場合、思わぬところで「毎日」摂っていたことに気づいたのです。
まず、めんつゆ。
原材料を見ると、果糖ぶどう糖液糖が入っているものが多い。毎日のように使う調味料だから、ちりも積もれば、です。
だから、めんつゆの使用は少し減らしました。入っていないタイプを選んだり、出番そのものを減らしたり。
それから、納豆の付属のたれ。
ほぼ毎日食べる納豆。あの小さなたれにも、けっこう入っているのです。なので、付属のたれは使うのをやめて、しょうゆを少しに変えました。慣れてみると、これはこれでおいしい。
そして、サラダのドレッシング。
これも毎日のように使っていたのですが、市販のものはやっぱり果糖ぶどう糖液糖入りが多くて。思いきって、いつものドレッシングをやめました。今は、バルサミコ酢とオリーブオイル、または ごま油と塩をさっとかけるだけ。シンプルですが、案外これで満足できています。
めんつゆ、納豆のたれ、ドレッシング。
どれも「毎日」のものでした。毎日だからこそ、ちょっと変えるだけで、積み重なる量はそれなりに減るはず。そう思っています。
茶色い食品、つい裏を見ちゃう
次は、カラメル色素。
コーラの色、ソースの色、お菓子のこんがりした色。あの茶色を出すのに、よく使われている着色料です。
これも、気にしはじめると本当にいろいろなものに入っています。お菓子、清涼飲料、加工食品。茶色いものを見ると、つい裏返して原材料を確認するクセがついてしまいました。
カラメル色素には、製法によって4つの種類があります。
そのうち、アンモニウム化合物を使って作られるタイプ(Ⅲ類・Ⅳ類)では、製造の過程で4-メチルイミダゾールという副産物ができることがあります。
これが、動物実験で発がん性が示されたことから、気にされているのです。
ただ、ここは冷静に見ておきたいところでもあります。
4-メチルイミダゾールは、添加物だけにできるものではありません。コーヒー豆を焙煎したり、肉を焼いたりするときにも、自然にできることがある。つまり、ふだんの料理でもゼロにはできない物質なんですね。
それに、動物実験で使われた量は、人がふつうに口にする量をはるかに超えるものでした。
なので、「カラメル色素が入っている=即危険」というわけではありません。
ただ、わたしが少し引っかかっているのは、別のところです。
日本の表示では、4種類のどれを使っていても、まとめて「カラメル色素」としか書かれません。気にする人が、Ⅲ類・Ⅳ類だけを避けようとしても、表示からは見分けられないのです。
見分けられないなら、どうするか。
わたしは、「カラメル色素」と書かれたお菓子は、できるだけ買わないようにしています。
幸い、よく探すと、カラメル色素を使っていないお菓子もちゃんとあります。原材料表示を見比べて、入っていないものを選ぶ。それだけのことです。
毎回ぜんぶチェックするわけではありません。
でも、しょっちゅう食べるお菓子くらいは、ちょっと気にする。そのくらいの感じです。
きれいな色には、わけがある
最後は、亜硝酸ナトリウム。発色剤と呼ばれるものです。
ハム、ベーコン、ソーセージ。それから、いくらやたらこ、明太子。
あの、いかにもおいしそうな、鮮やかなピンク色。
実はあれ、この発色剤の働きによるところが大きいのです。亜硝酸ナトリウムを使わないと、お肉の色は時間とともにくすんで、黒っぽくなってしまう。
きれいな色には、ちゃんとわけがあったわけです。
では、何が気になるのか。
亜硝酸ナトリウムは、肉や魚に含まれるアミンという物質と反応して、ニトロソアミン類という物質をつくることがあります。このニトロソアミン類の一部に、発がん性が指摘されているのです。
さらに、2015年には国際がん研究機関(IARC)が、加工肉そのものを「ヒトに対して発がん性がある」グループに分類しました。
……と書くと、かなり怖く感じますよね。
でも、ここも落ち着いて見ておきたいところです。
アミンという物質は、そもそも肉や魚にほぼ必ず含まれています。だから、この事実だけを大げさに伝えると、「食べたらがんになる」と過剰に怖がらせてしまう。
実際には、発色剤には使用量の基準が定められています。
それに、野菜や果物に含まれるビタミンCやポリフェノールには、ニトロソアミンの生成を抑える働きがあるとも言われています。お肉と一緒に野菜を食べる。それだけでも、ひとつの対策になるわけです。
とはいえ、毎日のように加工肉を食べるのは、やっぱり避けたい。
なので、わたしは加工肉の購入そのものを、控えめにするようにしました。
ただ、料理にどうしてもハムが必要なときもあります。
そういうときは、「無塩せき」と書かれたハムを選ぶようにしました。
無塩せきというのは、発色剤を使っていないハムのこと。色は市販のものより地味で、少しくすんで見えます。でも、それが本来の色なんですよね。
慣れてしまえば、味も問題なし。むしろ、これでいいんだ、と思えるようになりました。
海外では禁止、でも日本では…?
ここまで読んで、こう思った方もいるかもしれません。
「気になるものが日本で売られているって、大丈夫なの?」と。
調べていくと、たしかに、海外では規制・禁止されているのに、日本では使われている添加物が、いくつかあります。
たとえば、パンの改良剤に使われる臭素酸カリウム。EUなどでは禁止されていて、日本でも今は大手メーカーが使用をやめる流れになっています。
合成着色料の一部も、EUでは注意表示が義務づけられていたりします。
こう聞くと、「日本は規制がゆるいの?」と不安になりますよね。
でも、ここはちょっと丁寧に見ておきたいところです。
専門家によると、「海外で使われていない=危険」とは、必ずしも言い切れないのだそうです。
理由のひとつは、国によって添加物の「定義」そのものが違うこと。ある国で使われていないのは、危険だからではなく、その国の食文化ではメーカーが使う必要がなく、申請していないだけ、というケースも多いのだとか。
もうひとつは、規制の「考え方」の違い。
EUは「疑わしいものは、まず規制する」という予防原則の立場。一方、日本は「科学的に危険と示されるまでは認める」という立場に近い。
どちらが正しい、という話ではありません。スタンスの違いなのです。
だから、わたしは「海外で禁止=即アウト」とは考えないようにしています。
ただ、「海外では気にされているものなんだな」という事実は、知っておきたい。そのうえで、自分が避けたいかどうかを決める。
知ったうえで選ぶ。
結局のところ、これに尽きる気がしています。
気になることからできることから
ここまで、3つの添加物との付き合い方を書いてきました。
果糖ぶどう糖液糖、カラメル色素、亜硝酸ナトリウム。
どれも、「絶対に避けるべき毒」というわけではありません。だからといって、「まったく気にしなくていい」とも、わたしは思いません。
その中間の、ちょうどいいところ。
そこを、自分なりに探っていく作業なんだろうな、と思っています。
大事にしているのは、完璧を目指さないこと。
すべての食品の裏側をチェックして、添加物をゼロにする。そんなことをしたら、たぶん長続きしないし、何より食べることが楽しくなくなってしまう。
だから、できることから、ゆるく。
毎日使うめんつゆや納豆のたれ、ドレッシングは、ちょっと見直す。よく食べるお菓子は、原材料をちらっと確認する。ハムは、無塩せきを選んでみる。
そのくらいの、小さな積み重ね。
気になったところから、できる範囲で。
それで十分だと、今は思っています。
同じように、なんとなく添加物が気になりはじめた方へ。
あんまり気負わず、ゆるく長く、付き合っていけたらいいですよね。



